恋する惑星

 今、一緒に仕事をしている同期と遅い夕食をとると時間はすでに終電間際だった。難しい議論に火照った頭を夜の冷気で冷やしながら急ぎ足で駅に向かい電車に飛び乗った。ウィークエンドの電車は、女性専用車輌かと見まがうほど、女性だらけだった。身をすくめるようにして電車に揺られていると聞こえてくるのは殆どが恋愛の話。お酒が入っているのであろう高揚感からか、女性同士の気安さからか、声のボリュームも大音量だ。「誰それさんは大学時代の彼と十何年も続いている。」とか「あの娘は三ヶ月に一度彼氏を変えて信じられない」とか。僕は「恋する惑星」に迷い込んだ闖入者だった。

 フェイ・ウォンはいま何をしているのだろうか。金城武も日本ではあまり見なくなった。それにしてもクリストファー・ドイルのカメラワークは最高に格好良かった。あの時、フェイ・ウォンが腰をフリフリ歌っていたのは何の歌だったか。そういえば、あの頃友達だった女の子に良かれと思って薦めたのに「こんな映画、何が面白いの?」とそっけなく言われ傷ついたんだった・・・。

 そんなことに思いをめぐらせていると電車は降車駅に滑り込んだ。日付は日曜日になっていた。