雑想

チルドレン

過日、東京湾岸の病院に入院中のAさんが退院するというので、その頃合いが妥当なのか相当に迷いながらお見舞いに行く。駅を降り、強風をこなして病棟にあがるとAさんはナースセンターの前で看護師さんと談笑中。厭らしい意味ではなくなぜか女性に人気があ…

 恋する惑星

今、一緒に仕事をしている同期と遅い夕食をとると時間はすでに終電間際だった。難しい議論に火照った頭を夜の冷気で冷やしながら急ぎ足で駅に向かい電車に飛び乗った。ウィークエンドの電車は、女性専用車輌かと見まがうほど、女性だらけだった。身をすくめ…

この先の10年

ある著名な作家先生と酒席を共にさせていただいた。現代史家としても高名なその作家先生の話は機知に富み洒脱で、文弱の僕たちを前に一人奮闘し場を飽きさせることがない。特に現代史に明るくない僕は阿呆のように頷くしかなく、情けないことこの上なかった…

どんなご縁で

心配なことがある。海外に出張しても、日本との隔たりを時空間的に感じることは少なくなったが、こんな時はいやがおうにもその隔たりの深遠を思う。夜、持ってきたDVDを見る。老私小説作家夫婦の日々をトレースしたドキュメンタリー。ラストシーンを見な…

唇をかみしめて

シルバーウィークの一日を利用して帰省する。父が相変わらず入院しているので、そのお見舞いだ。代わる代わる泊まり込んでいる母や兄の話では、少しずつではあるが快方に向かっているようだが、まだ意識の混濁は続いているという。 病院は市街地を少しはずれ…

父の詫び状

遠方への出張が続き、背中にべったりとした疲れが覆い被さっているような気がしていた休日の前夜、珍しく田舎の兄から電話があった。何用だろうと訝しがって電話をとると「きょう父が入院した」という。脳炎のような症状が突然進み、足が利かなくなっている…

夏の少年たち

甲子園で全国高校野球選手権が開かれているちょうど同じ時期に、全国の様々な場所を取材で訪れた。駅や空港に降り立つと、きまって地元の出場校に声援を送る垂れ幕が掲げられている。街を歩くと、ショールームのテレビから野球中継が流され、数人が立ち止ま…

遠い日のこと

なんとなく野球場に足を運ぶ。プロ野球選手のドキュメンタリーを作っていた時以来なので7年ぶりのことだ。大学野球だったので、観客も多くなく、ゆったりした気分で打球を追う。バッターボックスにたつと球場は本当に大きく見えるのだが、客席で見ると小さ…

お通夜

先輩のお父さんが亡くなりお通夜に行く。数ヶ月前に先輩の結婚式があって、元気そうなご様子を見たばかりだったので居たたまれない気持ちになる。 先輩は人一倍家族想いで、そもそも泣き上戸なので、お通夜でも泣いていた。 結婚したばかりの奥さんが、先輩…

映像の向こうにあるもの

映像の向こうにあるものを考える機会があり、映像の、その中にある、その人々の人生に想いを馳せた。人生がなんらかの理由で途絶するとき、そのどうしようもないやり切れなさを、映像から立ち上がってくる、光や風やつぶやき、そのようなものから痛いほど感…

 同期と刑事物語

ここ数ヶ月、仕事が、種類も質もばらばらで、週ごとにめまぐるしく変わる状況なので、自分が何をしているのか、ときにわからなくなるような日々である。まあ、仕事とは概してそういうものなので、これでいいのだ、という感じでもあるが、思考の連続性が確保…

一年の記憶

今日で一応仕事納め。明日からなぜか夏休み。 映画も読書もほとんどおろそかになってしまった半年。日々の中で、記憶に強く刻まれる様々な作品に意識的に出会えるよう自らを仕向けなければと反省したりする。今年は何が一番心に残る作品だったろう。ドキュメ…

 朝日

出張中の機上で見た朝日。何となく谷川俊太郎の「朝のリレー」の光景を想像する。 カムチャッカの若者が キリンの夢を見てるとき メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている ニューヨークの少女が ほほえみながら 寝返りをうつとき ローマの少年は 柱頭を…

別離の季節

別離の季節。何歳になっても、この時期が来ると何となく感傷的な気持ちになってしまう。今年もお世話になった畏敬する先輩たちが転勤することになった。毎年、気恥ずかしさが勝って、人並み程度のお礼の言葉や激励の言葉すらおくれたためしがない。情けない…

 普通の一日

日曜日。会社に出て仕事をする。休みは職場に人があまりいないため細々としたことをこなしたり、企画のことを考えるのに適している。地方の職場のときには、ほとんど土日なく会社にいたような気がするが、通勤時間にかかる東京ではそうはいかない。東京はヒ…

記憶すること

ある一定期間現場を離れなければならない業務があり、その業務を誰が担うのか、先週からその議論が続いた。 そして、長い議論の末にその業務を後輩が務めることが決まった。後輩の苦渋の決断の意味を記憶しつづけること、その記憶の持続を周囲にも強いること…

 あのころの未来/谷口ジロー「犬を飼う」

後輩の家に招かれて愉しい時間を過ごした。同じ年だけど入社が一年違いの後輩とは、20代の半ばにお互い縁もゆかりもない土地に赴任し、3年間机を並べた。彼は、才能溢れているがゆえに、上司から理不尽な仕打ちをうけることが多かった。僕自身も、将来に…

 路傍の花

明治通りを歩きながら取材先に向かっている途中で、路傍につつましやかな花壇を見つけた。 小さいけれど心が行き届いているその花壇になぜか強く惹かれるものがあった。 ささやかだけど、目が行き届いて、大言壮語はしないけれど、本質的なことからは逃げな…

 時差ぼけと是枝裕和

時差ぼけ。アメリカ国内を移動してさらに時間の感覚がおかしくなっていく。 以前はそんなに気にならなかったが、今回はそれなりのダメージが体に蓄積されていき体内時計は狂いっぱなしだ。 朝から撮影をして、夜は打ち合わせをして、遅くにホテルに戻って見…

新しい航海

泊りがけの出張に行きました。準備を進めている番組の企画で、初めてカメラマンと音声マンを伴ったロケでした。最近は、民生機の発達でロケを1人で行うことも多いのですが、ひとまずは3人という人数が普通のドキュメンタリー番組の最小単位です。1人でデ…

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

久し振りに映画館で映画を見た。ぜひ見たいと思っていた「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」。映画館は満員で、ほとんど団塊の世代以上のように見受けられた。 内容は、自分の中で容易には言語化できないほど圧倒的で、その昏さは「時代」という一言で片…

 what you can do for your・・・

ここ1週間、朝から深夜まで会社の中にこもりっきりになっているうちに、街ではもう桜が満開を迎えているようだ。さかのぼればこの1ヵ月、他部署の人たちと頭をつきあわせ、喧々諤々、議論百出、自分は何のために今このことをしているのかという思いに引き…

野に咲く花のように

最近、日中は会議や交渉事が目白押しな一方で、真夜中に海外のリサーチャーとの取材連絡がある関係で、とかく、一日が長い。HDDにはドキュメンタリーがたまっていき、本を読むスピードもかなりおちて、体内が乾いていくような感覚だ。 会議を主催している…

 春の一日

梅が満開近い近所の公園を散歩したり、たまった新聞の切り抜きをしたりの休日。 購読している毎日新聞を読み返していると、今週もいろんな記事がありました。タイトルをあげると さよなら「銀河」乗車記 おちおち死んではいられない 建築家 槙文彦さん 明日…

最近の若者達は・・・

京都へ出張して、深夜まで10歳ぐらい年下の人たちと一緒に過ごす機会があった。 僕自身「最近の若者達は・・・」と呼ばれるにはいささかトウが立ちすぎているが、いつの時代も、大人達が考えるよりも、若い世代の人たちはしっかりしていて、むしろ大人達が…

京都へ

京都へ出張。東海道新幹線沿線は小糠雨というには大粒な雨が降っている。金曜日のせいなのか、のぞみの自由席は立ち見まで出ている。京都までは2時間10分なので、資料を読んで、少しうとうとして、読みかけの本を読んで、というかんじが調度よい。 関東の…

普通の一日

定刻より早く会社に行って、日中取材に出て、夜、要点を整理しなが取材メモを作り、今後の方向性を検討し、こまごまとした庶務をこなし、帰宅する。普通の一日である。 最寄駅から帰路につく途中、妙齢のお姉さんが、さっそうと歩きながら何か自分に陶酔する…

 企画のことを考える/「対角線上のモハメドアリ」

寒さが随分と緩んできたので、近所を散歩しながら、考え事をする。 週末に、先輩プロデューサーと先輩ディレクターと会食する機会があり、改めて大いなる刺激をもっらたので、自分の現在の問題意識と描きたいものなどを、歩きながら思い浮かべていった。 休…

 車中の親子/永沢光雄「愛は死ぬ」

昨日、最終のバスで帰宅していると、先に乗っていた親子らしき2人が大きな声で熱心に話をしているのに注意をひかれた。話の主導権は主に息子が握っていたのだが、どうやら大学生で、就職活動中らしい。この日も何社かセミナーを受けてきたらしく、いささか…

渋谷「八詩」/様々な発見

他部署の方と、打ち合わせを兼ねて会食。 普段はどうしても同じセクションの人たちと話す機会が多いので、そこには自ずと暗黙の共通言語があって、それはそれで気持ちよいのだけど、そういう枷からはずれての会話もまた愉しいし、様々な発見があってとても勉…