テレビ

ワンカット

長い仕事に区切りがつくと、半年前に我が家にやってきた盲導犬のパピーが見違えるほど大きくなっていた。 久しぶりに散歩に連れ出すと、リードを引く力が強い。引かれるままに歩いていると、見ず知らずの商店街にたどりつく。いつも歩いている道なのだろうか…

8月のジャーナリズム

8月がきて、今年もNHK・民放問わず戦争関連ドキュメンタリーの力作が並ぶ。居住まいを正して番組を見る。 「日本海軍 400時間の証言」「核は大地に刻まれていた」「戦場のラブレター」「康子のバラ 19歳・戦禍の日記」など。厳粛な気持ちで見る。 …

つんどく

古本屋で古い文庫本を仕入れて、つん読する。高橋和巳「憂鬱なる党派」村松友視「トニー谷ざんす」干刈あがた「ウォークインチャコールグレイ」など。系統がなさすぎて、自分の肥やしとして有効に積み上がっていかない読書である。学生のころは一冊一冊の記…

NHKスペシャル「マネー資本主義」

NHKスペシャル「マネー資本主義」を見る。全編スタイリッシュである。特にCGのセンスが秀逸だと感じた。 経済的素養が全くないため、番組で展開されていた時代の読み解きが正しいのかどうか(金融関係の人が書いたブログを流し読みしていると異論もある…

 テレビの方法論

NHKの新番組「追跡!AtoZ」を見る。最近、今野勉氏の新著「テレビの青春」を読んだこともあり、今の時代のテレビが表出すべきリアリティと、それを伝えるための方法論について考察する。テレビの青春作者: 今野勉出版社/メーカー: エヌティティ出版発…

 旅とドキュメンタリー

HDDに撮りためていた最近のドキュメンタリーの中で、静岡テレビとドキュメンタリージャパンが制作した「感動地球スペシャル 宮崎あおい、心にしみるアフリカ」が、とても良い(好みの)番組だと思った。 宮崎あおいが内戦の爪痕残るルワンダを旅するのだ…

昭和のドラマ

近所のレンタル屋に「池中玄太80キロ」のDVDが入荷していたので、パート1からパート2にかけてむさぼるように見る。殆ど、不眠不休で見ている感じだ。高校時代、野球部の同期が池中玄太の大ファンで、意気投合したことをなつかしく思い出した。お互い…

 「ヒロシマナガサキ」

ここ1年の映像作品吸収に関しての怠慢を反省し、TSUTAYAでいろいろと借りてくる。そのひとつ1年以上前に公開された「ヒロシマナガサキ」。 アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞に輝いた映画監督、スティーヴン・オカザキ。広島、長崎への原爆投下か…

 天才たちの競演

死せる赤塚不二夫、生けるタモリを走らす・・・稀に見る天才2人の最後の競演。 ここまですごい弔辞にはついぞ出会ったことがない。話題を呼んだ最相葉月氏の星新一の評伝の中でも、タモリ氏の星への言葉にはぐっとくるものがあったが、それにしてもなんと透…

 「中田英寿 僕が見た、この地球。〜旅、ときどきサッカー〜」

もろもろのことどもに追いまくられる毎日で深夜に帰宅する。 夜酒を飲みながら録画しておいた「中田英寿 僕が見た、この地球。〜旅、ときどきサッカー〜」を見る。テレビマンユニオン制作。 番組を見た中田氏がどんな感想を持ったのかが一番気になった。

 普通の一日

日曜日。会社に出て仕事をする。休みは職場に人があまりいないため細々としたことをこなしたり、企画のことを考えるのに適している。地方の職場のときには、ほとんど土日なく会社にいたような気がするが、通勤時間にかかる東京ではそうはいかない。東京はヒ…

ドラマも見なければ

「テレビドラマ ベスト・テン10年史 1997−2006」(愛育社)という本を読んでいると、そのスパンは、テレビの世界に入った時期とほぼ重なりあうのだが、あまり連ドラを熱心に見ていないということに気づかされる。 DVDでその後見たものも含めて…

テレビにとって「私」とは何か

日曜日の深夜に放送されたTBS「報道の魂 あの時だったかもしれない 〜テレビにとって「私」とは何か〜 」を見て極めて多くのことを考えさせられました。何度か見て、思考を定着させていきたいと思いましたが、この番組を見た畏敬する先輩の感想も印象的で…

 まっすぐな番組

5月3日に放送された札幌テレビ「まっすぐに智華子 〜全盲の少女と家族の13年」を見ました。全盲の少女の成長物語です。小野智華子さんを主人公にしたドキュメンタリーは継続的に放送されていて、過去に放送文化基金賞などを受賞したりもしています。録画…

 俗情との結託

一か月ぐらい前に放送されて、何やかやで見ていなかったETV特集「神聖喜劇ふたたび〜作家大西巨人の闘い〜」を見ました。90分というサイズでしたが、様々な演出が施され、老作家の強靭な精神のありようをあますことなく堪能できるドキュメンタリーでし…

賢姉愚弟

同じ職場で働く後輩と久しぶりに話しをした。ある企画の方向性に悩んでいるという。 どんな仕事でもそうだが、自分にとって、番組制作はいつも逡巡と後悔の繰り返しだ。夜中に「なぜ自分はこの企画が出来ると思ってしまったんだろう」と考えて眠れなくなりそ…

 ハイスピードカメラという妙味

出張を終え帰京。撮影の疲れと同時に肝臓の疲れを感じる。ロケに出ると、お酒を飲みながらスタッフと番組の方向性についてじっくりと話しあうことが多いので、どうしても酒席が長くなりがちだ。でも、番組と向き合っていくために不可欠なプロセスでもある。 …

草創期の熱気

今日の読売新聞の編集手帳より。 杉下茂投手の球が打者、藤尾茂選手の下っ腹を直撃した。1955年6月7日の巨人―中日戦である。実況の志村正順(せいじゅん)アナウンサーは「当たりました。なんと藤尾の“き…”」と言って絶句した。志村アナは机の下で隣の解…

映像化の問題

国内出張です。今回の番組は映像化が非常に難しいので、ストーリーをいつもより詳細に考えていかねばなならないとあせること仕切りです。テレビは言うまでもなく映像メディアなので、「映像化」という問題が常についてまわります。映像が「強い」場合は、テ…

 テレビとは人の「表情」

出張でHDDにたまったままになっていたドキュメンタリー番組をまとめてみました。 NHKスペシャル「愛美さんが教室に戻れる日」NNNドキュメント「箱車の喜び」BS世界のドキュメンタリー「Growing Up Online」など。 NNNドキュメントが印象的でし…

ザ・ノンフィクション「姉と弟のススキノ物語」 NNNドキュメント「兵士たちが記録した南京大虐殺」

日曜日は一週間の中でドキュメンタリーの放送枠が一番多い日だ。何本かドキュメンタリーを見る。テレビドキュメンタリーには定型があるようでないことを考える。特に民放のドキュメンタリーの場合は、伝え手(記者やディレクター)の思いが最も重視されてい…

最相葉月「東京大学応援部物語」/にっぽんの現場「告発の電話鳴りやまず」

漠然と車を走らせていると桜のトンネルに出くわした。 桜のトンネルをくぐりながら、高校生のころに中原俊監督の「桜の園」という映画を見て、女子高の演劇部の他愛ない日常の屈託を描いた小さな世界のお話なのに、「永遠」を描いている気がして、静かな感動…

桜と食の安全と

桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下…

人物を等身大に描くということ

日曜日、取材で東大を訪れる。実人生で全く縁がない場所である。 安藤忠雄氏が建築した福武ホールという建物の中で若い3人を取材させていただいた。とても楽しく取材させていただいたが、それはそうと安藤忠雄氏は2度ほどお会いさせていただいたことがある…

NHK特集「どんなご縁で」

夜、お気に入りのドキュメンタリーを見る。NHK特集「どんなご縁で」。個人的に5本の指に入る番組で、いつも自分が迷ったら見ているような気がする。がんに侵された老作家と、認知症を患う妻の愛と葛藤の物語。ほとんどがイメージカットと証言でつづられ…

BS放送記念日特集「映像メディアはどうなるのか」

会社に出て仕事をしようと思うが、あまりにも天気が良いので自転車でちょっと離れた公園まで遠出して作業をすることに。大勢の人が気持ちよさそうに体を動かしているのを見ながら、パソコンに向かうのは不思議な気分である。 早朝にHDDにたまっていく一方…

 企画のことを考える/「対角線上のモハメドアリ」

寒さが随分と緩んできたので、近所を散歩しながら、考え事をする。 週末に、先輩プロデューサーと先輩ディレクターと会食する機会があり、改めて大いなる刺激をもっらたので、自分の現在の問題意識と描きたいものなどを、歩きながら思い浮かべていった。 休…

NHKスペシャル「ミラクルボディ第一回 アサファ・パウエル」

今日から、始まったNHKスペシャルの大型シリーズ「ミラクル・ボディ」。ハイスピードカメラなど最新鋭のテクノロジーを駆使してトップアスリートの真髄に迫るドキュメンタリーは、驚きと楽しみ、そしてスペクタクル感に満ち溢れていて圧倒的でした。サイ…

 フィッツジェラルド「ジャズエイジのこだま」/NHKスペシャル「映像の世紀」

気がつけば同じ本を何度も買ってしまうことがあるけれど、スコット・フィッツジェラルドはそんな作家だ。 この前、高田馬場の古本屋街で、定価より高い値段で絶版になったフィッツジェラルドの文庫本を買ったら、実家に同じ文庫本が2冊もあった。 フィッツ…

  日常の豊饒さ/吉本隆明「恋唄」

他部署の先輩が作った番組を見た。まだ具体的な放送日は決まっていないそうだが、90分サイズの長編ドキュメンタリーである。驚いたのは、番組が全くのノーコメントであること。近年のテレビ番組では、殆ど見られない演出方法だろう。下町に暮らす老夫婦と…