NHKスペシャル「ミラクルボディ第一回 アサファ・パウエル」

 今日から、始まったNHKスペシャルの大型シリーズ「ミラクル・ボディ」。ハイスピードカメラなど最新鋭のテクノロジーを駆使してトップアスリートの真髄に迫るドキュメンタリーは、驚きと楽しみ、そしてスペクタクル感に満ち溢れていて圧倒的でした。サイエンティフィカルな考察は「へぇー」とうなされることの連続なのですが、とにもかくにも机上の検証を裏打ちする特撮映像の実在感が、見たことのない世界に視聴者をいざなって、テレビ表現の一つの到達点のように感じました。
 一方で個人的に好きなのは、特撮映像を離れた40分すぎからエンディングまでのパウエルの内面に迫るシーン。大舞台で勝利できないパウエルの弱さと、パウエルを取り囲むジャマイカの風景や(エンド前の子供たちが競争するシーンはわかっていながらグッとくる)彼の家族の始原的な姿のコントラストが、トップアスリートの「孤独」を余すことなく伝えていて、この番組の奥行きの深さと凄味を感じました。番組を見終わって、五輪選考会に敗れながら「まだ陸上生活を続けたい」と切ない笑顔で語った高橋尚子選手のことが、なぜか、思い出されました。

いい番組や、いい映画、そして、いい本に出会うと、世界が遠くまで見渡せて、また明日から頑張ろうという気持ちになるから不思議です。