2009-01-01から1年間の記事一覧

どんなご縁で

心配なことがある。海外に出張しても、日本との隔たりを時空間的に感じることは少なくなったが、こんな時はいやがおうにもその隔たりの深遠を思う。夜、持ってきたDVDを見る。老私小説作家夫婦の日々をトレースしたドキュメンタリー。ラストシーンを見な…

唇をかみしめて

シルバーウィークの一日を利用して帰省する。父が相変わらず入院しているので、そのお見舞いだ。代わる代わる泊まり込んでいる母や兄の話では、少しずつではあるが快方に向かっているようだが、まだ意識の混濁は続いているという。 病院は市街地を少しはずれ…

父の詫び状

遠方への出張が続き、背中にべったりとした疲れが覆い被さっているような気がしていた休日の前夜、珍しく田舎の兄から電話があった。何用だろうと訝しがって電話をとると「きょう父が入院した」という。脳炎のような症状が突然進み、足が利かなくなっている…

夏の少年たち

甲子園で全国高校野球選手権が開かれているちょうど同じ時期に、全国の様々な場所を取材で訪れた。駅や空港に降り立つと、きまって地元の出場校に声援を送る垂れ幕が掲げられている。街を歩くと、ショールームのテレビから野球中継が流され、数人が立ち止ま…

 おとうと

街をぶらぶらする。 通りで野外演奏会が開かれていて、一組の姉弟が演奏に聞き入っていた。時おり、姉が弟に演奏の説明をしてやっている様子だったが、腕白盛りなのか関心があまりないのか弟は集中力を切らせてしまう。それでも姉は熱心に音楽の魅力を弟に教…

「1968」「戦争と青春」「少年時代」

週末に何か本を読もうと思って小熊英二の「1968」の上巻を読み始める。小熊氏の本らしく、その頁量は圧倒的で、仰向けになって読んでいると手首を痛めそうですらある。叛乱の季節とでも言うべきあの時代の通説を、丁寧にとぎほどしていくその内容は、ま…

8月のジャーナリズム

8月がきて、今年もNHK・民放問わず戦争関連ドキュメンタリーの力作が並ぶ。居住まいを正して番組を見る。 「日本海軍 400時間の証言」「核は大地に刻まれていた」「戦場のラブレター」「康子のバラ 19歳・戦禍の日記」など。厳粛な気持ちで見る。 …

高橋和巳の小説

わが解体―高橋和巳コレクション〈10〉 (河出文庫)作者: 高橋和巳出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1997/02メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る かつて、ほんの20年ほど前まで、「進歩的知識人」というジャンルがあり、論…

「運命の人」

四国へ出張する空港で山崎豊子の「運命の人」を購入。外務省機密漏洩事件を材にした小説であるが、山崎豊子の本はすぐに読めるので、行き帰りで読めてしまう。同じく現代史をベースにする前作「沈まぬ太陽」よりも、主人公の描写に陰影があるため、読後感の…

帰郷

野暮用があって実家に少しだけ帰る。何年か前、初めて訪れた妻が「中国の田舎みたい」といった本当に何もない故郷ではあるが、その変わらぬ姿が、胸に沁みるようになった。 帰郷しても、旧知の人達とは殆ど没交渉なのだが、今回は、一人の幼なじみと偶然出会…

つんどく

古本屋で古い文庫本を仕入れて、つん読する。高橋和巳「憂鬱なる党派」村松友視「トニー谷ざんす」干刈あがた「ウォークインチャコールグレイ」など。系統がなさすぎて、自分の肥やしとして有効に積み上がっていかない読書である。学生のころは一冊一冊の記…

遠い日のこと

なんとなく野球場に足を運ぶ。プロ野球選手のドキュメンタリーを作っていた時以来なので7年ぶりのことだ。大学野球だったので、観客も多くなく、ゆったりした気分で打球を追う。バッターボックスにたつと球場は本当に大きく見えるのだが、客席で見ると小さ…

NHKスペシャル「マネー資本主義」

NHKスペシャル「マネー資本主義」を見る。全編スタイリッシュである。特にCGのセンスが秀逸だと感じた。 経済的素養が全くないため、番組で展開されていた時代の読み解きが正しいのかどうか(金融関係の人が書いたブログを流し読みしていると異論もある…

お通夜

先輩のお父さんが亡くなりお通夜に行く。数ヶ月前に先輩の結婚式があって、元気そうなご様子を見たばかりだったので居たたまれない気持ちになる。 先輩は人一倍家族想いで、そもそも泣き上戸なので、お通夜でも泣いていた。 結婚したばかりの奥さんが、先輩…

 テレビの方法論

NHKの新番組「追跡!AtoZ」を見る。最近、今野勉氏の新著「テレビの青春」を読んだこともあり、今の時代のテレビが表出すべきリアリティと、それを伝えるための方法論について考察する。テレビの青春作者: 今野勉出版社/メーカー: エヌティティ出版発…

映像の向こうにあるもの

映像の向こうにあるものを考える機会があり、映像の、その中にある、その人々の人生に想いを馳せた。人生がなんらかの理由で途絶するとき、そのどうしようもないやり切れなさを、映像から立ち上がってくる、光や風やつぶやき、そのようなものから痛いほど感…

取り返しのつかない人生

最近、空港や駅で本を買う機会が多く、街場の本屋での時よりも長考がないので、失敗も多いのだが、村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」は当然ながら成功だった。 1年ほど前、久しぶりに清水俊二訳版を読んだときに、10代や20代で読んだ時とは全く別の趣…

 旅とドキュメンタリー

HDDに撮りためていた最近のドキュメンタリーの中で、静岡テレビとドキュメンタリージャパンが制作した「感動地球スペシャル 宮崎あおい、心にしみるアフリカ」が、とても良い(好みの)番組だと思った。 宮崎あおいが内戦の爪痕残るルワンダを旅するのだ…

 同期と刑事物語

ここ数ヶ月、仕事が、種類も質もばらばらで、週ごとにめまぐるしく変わる状況なので、自分が何をしているのか、ときにわからなくなるような日々である。まあ、仕事とは概してそういうものなので、これでいいのだ、という感じでもあるが、思考の連続性が確保…

昭和のドラマ

近所のレンタル屋に「池中玄太80キロ」のDVDが入荷していたので、パート1からパート2にかけてむさぼるように見る。殆ど、不眠不休で見ている感じだ。高校時代、野球部の同期が池中玄太の大ファンで、意気投合したことをなつかしく思い出した。お互い…