おとうと

 街をぶらぶらする。

 通りで野外演奏会が開かれていて、一組の姉弟が演奏に聞き入っていた。時おり、姉が弟に演奏の説明をしてやっている様子だったが、腕白盛りなのか関心があまりないのか弟は集中力を切らせてしまう。それでも姉は熱心に音楽の魅力を弟に教えてあげているようだった。
 映像に関する仕事をしている人には市川崑監督の信奉者は多いのだけれど、僕は不勉強で殆どの作品を見ていないのだが1960年のキネマ旬報ベストワン作品である「おとうと」は学生時代になぜか繰り返し見た。カラー作品なのだがモノクロの風合いで「色のない色を」と市川監督が宮川一夫カメラマンに要求したことで有名な映画だ。僕はその映像美よりも、岸恵子演じるところの姉・げんがとても魅力的に感じたのだった。
 姉弟の後ろ姿を見ながら、久しぶりに「おとうと」を見てみたいと思ったりした。

おとうと [DVD]

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