NHK特集「どんなご縁で」
夜、お気に入りのドキュメンタリーを見る。NHK特集「どんなご縁で」。個人的に5本の指に入る番組で、いつも自分が迷ったら見ているような気がする。がんに侵された老作家と、認知症を患う妻の愛と葛藤の物語。ほとんどがイメージカットと証言でつづられるが、凡百なルポをはるかに凌駕する圧倒的なドキュメンタリーだと思う。このドキュメンタリーを撮影したカメラマンは早逝したそうなのだが、葬儀の時、カメラマンの娘は「お父さんの番組を見ると、無口なお父さんが、いま何に悩み何を伝えたかったのか感じることができた」と語ったという。
そのカメラマンが撮影した夫婦が長い歳月を過ごしたダイニングを静かにドリーするカットと、老作家の「愛情」という小説の一節からひいたラストコメントで紡ぎだされるエンディングは、何度見ても、いいのである。
そのラストコメント。
愛 情
ひとつの愛情が自分の心を訪れた
それから曇った日が輝かしくなり
草や木や花が優しく自分に語りかけた
愛情はいつも自分と一緒にいるので
人々を懐かしく思い
その日その日が楽しく愉快だ
耕治人