「ヒロシマナガサキ」

 ここ1年の映像作品吸収に関しての怠慢を反省し、TSUTAYAでいろいろと借りてくる。そのひとつ1年以上前に公開された「ヒロシマナガサキ」。

アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞に輝いた映画監督、スティーヴン・オカザキ。広島、長崎への原爆投下から60余年を経た今、“原爆の被害に対する認識と関心を世界に呼び起こしたい”と、監督自身が日本で500人以上の人に会い、取材を重ねた。14人の被爆者、原爆投下に関与した4人のアメリカ人の証言を軸に、貴重な記録映像や資料を交え、広島と長崎における原爆投下の真実に迫る。被爆者の想像を絶する苦悩と真正面から向き合い、25年の歳月かけて完成された渾身のドキュメンタリー。

 注目すべきは14人の証言者の証言内容の非連続性だ。テレビドキュメンタリーの場合、まさに重箱の隅まで意識し構成するのが常なのだが、この映画では、証言の非連続性や、強度の決して強くない証言と心底重い証言の「ぶつかり」が、見る者に原爆投下がもたらす「惨禍」を刻み込んでいくのである。
 ただこうした方法論がテレビでないかと言えば決してそうではなく、例えば97年に放送された「沖縄 戦場の記憶」では、過酷な沖縄戦を体験した住民たちが、当時の様子を日常に落とし込んで(淡々と、時に全く関係のない話をしながら)語っていくことで、逆説的に「戦場の極限」が伝わってくる。
 「ヒロシマナガサキ」はバンフテレビ祭でグランプリを獲得しているが、既存のテレビドキュメンタリーはドキュメンタリー映画よりも多くのものを内包している場合が多いような気がする。

ヒロシマナガサキ [DVD]

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