新しい航海

 泊りがけの出張に行きました。準備を進めている番組の企画で、初めてカメラマンと音声マンを伴ったロケでした。最近は、民生機の発達でロケを1人で行うことも多いのですが、ひとまずは3人という人数が普通のドキュメンタリー番組の最小単位です。1人でデジカムを持って取材現場に行くのは肉体的にも精神的にも機動性があり、それはそれで悪くないのですが、3人のスタッフで意見を戦わせあい、時に反目し、その中で意志の疎通をはかりながらロケを進めていくことは、切り取られる映像に1人でデジカムを回すときには絶対表現しえない「意味」が与えられて、特に「平時」を扱う番組においては、3人という基本人数はしばらくは不変なように思います。

 岩波書店から出版されている「シリーズ ジャーナリズムの条件」の第四章の中で、ある高名なディレクターの方はこう書いています。

私たちはロケーションに行く仲間を、クルーと呼ぶ。(中略)クルーとは本来、同じ船を動かす乗組員のことである。ロケーションとは未知の海に船を漕ぎだすようなものだ。(中略)ディレクターには船の操舵を握るという重要な役割があるが、私の目と耳は二つずつしかない。しかし「対話」が機能しているクルーにおいてはそれが四つにも六つにも増える。こうした取材現場におけるクルー同志の「対話」が、現場における「公共性」、番組の「公共性」にとってかけがえのないものだと思う。

新しい航海が始まりました。

ジャーナリズムの可能性 (ジャーナリズムの条件 4)

ジャーナリズムの可能性 (ジャーナリズムの条件 4)