「『互恵』の糸」/シリーズ日本とアメリカ「深まる日米同盟」

二本のドキュメンタリー番組を見た。

一本は今年のFNSドキュメンタリー大賞を受賞した「『互恵』の糸〜山里の中国人留学生を追って」

日本の中小製造業がおかれている現状がかいま見えて、暗澹たる気分になった。グローバリズムのうねりの前では、地方の零細企業はなす術はないのだろうか。規制緩和の中、個々が自由なクリエイティビティを発揮すれば、どんなにハンディのある状況下でも、競争を勝ち抜いていけるという甘言は、絵空事に感じざるを得ない。
中国人研修生を「労働力」とみなすように変える政府の大方針の中で、給料を「高卒新人」並みにしなければならないということに頭を抱える経営者の姿が描かれていたが、中国人研修生の目線にたっても、経営者の目線にたっても、振り上げた拳の降ろし所がみつからない、そんな気分にさせるドキュメンタリーだった。


夜はNHKスペシャルの新シリーズ「日本とアメリカ」の一本目を見る。

日本がアメリカと国交を開いておよそ150年。いま日米で何が起きているのか。大きく変質する日米関係を、様々な角度から見つめるシリーズ。第1回は、両国の軍事協力いわゆる「日米同盟」がテーマ。
「基地を提供する」代わりに「核の傘で守ってもらう」という片務的な関係が続いてきた戦後の日米同盟のあり方がいま大きく揺れている。北朝鮮のミサイルの脅威に対抗しようと、急速に配備が進むミサイル防衛。その現場では、日米の情報共有、技術・産業面での一体化が究極まで進んだ結果、集団的自衛権を行使しないという原則や、武器輸出三原則を乗り越える動きさえ出てきている。
911テロ以降、日米の軍事協力は、グローバルな範囲にも拡大してきた。「湾岸戦争の教訓」から日本政府が積極的に始めた海上自衛隊のインド洋での給油活動。政治状況から中断したが、実はその間も水面下で同盟強化の動きが進んでいた。番組では、ミサイル防衛とインド洋給油活動を巡る日米の動きを取材、日米同盟にどんな変化が起きているのか、その実態を描く。(番組HPより)

軍事関係に関する人並みの知識も持ち合わせていないので「へぇー」と驚くことの連続だった。
番組HPには「日米同盟のあり方が大きく揺れている」とあるが、冷戦時代からの時代スケールで見るとあり方は変貌しているのだろうが、現実に番組に登場した人々のメンタリティや描かれたシーンの中では「あり方は全く揺れて」おらず「現実を追認することに躍起になっている」ように見えてしまうことの意味を、考えさせられた。