プレミアム10「この世界に僕たちが生きてること」

再放送されたドキュメンタリー「この世界に僕たちが生きてること」を見て、言葉では言い表せない静かな感動におそわれています。

プレミアム10
 「この世界に 僕たちが生きてること」
 愛知県・旧下山村(現 豊田市)の山あいの静かな地区に、家族が営む素敵なカフェ「ときどき館」がある。そこには双子の画家が描いた美しい絵が飾られている。
 河合正嗣(まさし)さん、範章(のりあき)さん。難病、筋ジストロフィーとともに生きてきたが、弟、範章さんは、すばらしい油絵を描き上げた直後に、眠るように息をひきとった。23歳だった。同じように病気が進行していた兄、正嗣さんは、声を失うかわりに気管切開手術を選択し、一日でも長く、絵を描き続ける道を選んだ。
 そうして正嗣さんが描き始めたのが「ほほ笑み」の絵だ。手術をした病院でモデルを募集、命を支えてくれた医師や看護師、そして入院している患者たちの笑顔を、一人一人時間をかけて丹念に描いていく。目標は、110人。「1(ひと)10(と)人(ひと)」、人と人がつながる、という意味をこめる。
 たとえ世界がどんなに絶望や苦しみに満ちていても、それでも人は「ほほ笑む」ことができ、人生は生きるに値する。
 そんな「ほほ笑み」を求めて、鉛筆の繊細な線で画用紙に優しい笑顔を浮かび上がらせてゆく。

番組のHPに掲載された抄録ではそれほどまでには伝わってきませんが、「生きることの意味」とは「人間」とは何なのか、見た人全てを、圧倒的に射抜くドキュメンタリーだったように思います。
主人公の河合正嗣さんの、まさに、命をたたきつけるかのような画業、そして、河合さんがときどきに語る「世界」や「人々」に向けた言葉(911後の人々の動きに違和感があるというインタビューは、911に関して発せられたどんな知識人の言葉よりも重いものだったと思う)、さらに、河合さんを支える家族の姿、その全てが「生きる意味」とは何なのか、迫ってあまりあるものでした。

河合さんの現在進行形のドキュメントの間に挟まれる、家族のかけがえのない歴史、そして夭折した弟の範章さんが作曲した旋律に涙が止まりませんでした。

テレビの、ドキュメンタリーの、力は、こうあるべきだと・・・・。