プロ野球の未来/ハロルド作石「ストッパー毒島」

球春到来。プロ野球がキャンプインした。

今年の話題といえばジャイアンツがなりふり構わない戦力補強をしたことぐらい。1月中旬に行われたスタッフミーティングで滝鼻オーナーは「少しでもたるんだプレーをした選手は東京ドームから去れ、仮に補強で自分のポジションがなくなったと腐っている選手がいればチームには必要ない。」と激を飛ばしたそうだが、仮にそれが正論だとしても、プロ野球全体のことを考えると「長島時代は去ったというのにまだこんな近視眼的な球団経営をやっているのか」と鼻白んでしまう。

2月4日号の週刊ベースボールによると、ジャイアンツの選手年棒の総額は53億円。それに対して最低の広島カープの総額は15億円。3倍以上の開きがあるそうだ。資金力の差がイコール戦力の差ではないことを、近年の千葉ロッテや北海道日ハムの活躍は明らかにしつつあるが、日本球界全体のビジョンは十年一日のごとくはっきりとは見えてこない。

今年から、日本でも決して一流とは言えない選手までも巨額の年棒を手にメジャーにわたりはじめた。千葉ロッテの藪田が3億3000万円、東北楽天の福盛が1億6500万円。もはや日本人メジャー挑戦に何のロマンも哲学も感じられない現状が生まれてきた今だからこそ、プロ野球の魅力を掘り起こしていける時期だとに来ているような気もするのだが、あいもかわらずのジャイアンツ的なものを見せられると気持ちが萎えてゆく。

ハロルド作石の名作漫画「ストッパー毒島」は、パリーグのお荷物球団「京浜アスレチックス」の奮闘を描いて感動的だが、読み返すたびに日本野球のすばらしさが立ち上がってくる。
勝利への献身、自己犠牲のはての超絶的なパフォーマンス、選手達の燦々とした個性、そして、奇蹟的な結末。日本野球にはあってメジャーにはないもの、しか日本野球に失われて久しいものが詰まっている。

今年のプロ野球は、ぜひ広島カープに奇蹟の大進撃を見せてもらい、日本プロ野球カタルシスを思い出させてほしいと思う。

ストッパー毒島 12 (ヤングマガジンコミックス)

ストッパー毒島 12 (ヤングマガジンコミックス)