天才たちの競演

死せる赤塚不二夫、生けるタモリを走らす・・・稀に見る天才2人の最後の競演。 ここまですごい弔辞にはついぞ出会ったことがない。話題を呼んだ最相葉月氏の星新一の評伝の中でも、タモリ氏の星への言葉にはぐっとくるものがあったが、それにしてもなんと透…

 朝日

出張中の機上で見た朝日。何となく谷川俊太郎の「朝のリレー」の光景を想像する。 カムチャッカの若者が キリンの夢を見てるとき メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている ニューヨークの少女が ほほえみながら 寝返りをうつとき ローマの少年は 柱頭を…

別離の季節

別離の季節。何歳になっても、この時期が来ると何となく感傷的な気持ちになってしまう。今年もお世話になった畏敬する先輩たちが転勤することになった。毎年、気恥ずかしさが勝って、人並み程度のお礼の言葉や激励の言葉すらおくれたためしがない。情けない…

 「中田英寿 僕が見た、この地球。〜旅、ときどきサッカー〜」

もろもろのことどもに追いまくられる毎日で深夜に帰宅する。 夜酒を飲みながら録画しておいた「中田英寿 僕が見た、この地球。〜旅、ときどきサッカー〜」を見る。テレビマンユニオン制作。 番組を見た中田氏がどんな感想を持ったのかが一番気になった。

 普通の一日

日曜日。会社に出て仕事をする。休みは職場に人があまりいないため細々としたことをこなしたり、企画のことを考えるのに適している。地方の職場のときには、ほとんど土日なく会社にいたような気がするが、通勤時間にかかる東京ではそうはいかない。東京はヒ…

記憶すること

ある一定期間現場を離れなければならない業務があり、その業務を誰が担うのか、先週からその議論が続いた。 そして、長い議論の末にその業務を後輩が務めることが決まった。後輩の苦渋の決断の意味を記憶しつづけること、その記憶の持続を周囲にも強いること…

吉祥寺の古本屋

所用があっていった吉祥寺でいい古本屋に出くわす。 「東京人」や「散歩の達人」の古本屋特集などでよく紹介されている「りぶる・りべろ」。 今は東京・地方問わずどこにいってもチェーン店の古本屋がありそれはそれで重宝なのだが、やはり品揃えにこだわり…

ドラマも見なければ

「テレビドラマ ベスト・テン10年史 1997−2006」(愛育社)という本を読んでいると、そのスパンは、テレビの世界に入った時期とほぼ重なりあうのだが、あまり連ドラを熱心に見ていないということに気づかされる。 DVDでその後見たものも含めて…

テレビにとって「私」とは何か

日曜日の深夜に放送されたTBS「報道の魂 あの時だったかもしれない 〜テレビにとって「私」とは何か〜 」を見て極めて多くのことを考えさせられました。何度か見て、思考を定着させていきたいと思いましたが、この番組を見た畏敬する先輩の感想も印象的で…

 まっすぐな番組

5月3日に放送された札幌テレビ「まっすぐに智華子 〜全盲の少女と家族の13年」を見ました。全盲の少女の成長物語です。小野智華子さんを主人公にしたドキュメンタリーは継続的に放送されていて、過去に放送文化基金賞などを受賞したりもしています。録画…

 俗情との結託

一か月ぐらい前に放送されて、何やかやで見ていなかったETV特集「神聖喜劇ふたたび〜作家大西巨人の闘い〜」を見ました。90分というサイズでしたが、様々な演出が施され、老作家の強靭な精神のありようをあますことなく堪能できるドキュメンタリーでし…

賢姉愚弟

同じ職場で働く後輩と久しぶりに話しをした。ある企画の方向性に悩んでいるという。 どんな仕事でもそうだが、自分にとって、番組制作はいつも逡巡と後悔の繰り返しだ。夜中に「なぜ自分はこの企画が出来ると思ってしまったんだろう」と考えて眠れなくなりそ…

 ハイスピードカメラという妙味

出張を終え帰京。撮影の疲れと同時に肝臓の疲れを感じる。ロケに出ると、お酒を飲みながらスタッフと番組の方向性についてじっくりと話しあうことが多いので、どうしても酒席が長くなりがちだ。でも、番組と向き合っていくために不可欠なプロセスでもある。 …

草創期の熱気

今日の読売新聞の編集手帳より。 杉下茂投手の球が打者、藤尾茂選手の下っ腹を直撃した。1955年6月7日の巨人―中日戦である。実況の志村正順(せいじゅん)アナウンサーは「当たりました。なんと藤尾の“き…”」と言って絶句した。志村アナは机の下で隣の解…

映像化の問題

国内出張です。今回の番組は映像化が非常に難しいので、ストーリーをいつもより詳細に考えていかねばなならないとあせること仕切りです。テレビは言うまでもなく映像メディアなので、「映像化」という問題が常についてまわります。映像が「強い」場合は、テ…

 テレビとは人の「表情」

出張でHDDにたまったままになっていたドキュメンタリー番組をまとめてみました。 NHKスペシャル「愛美さんが教室に戻れる日」NNNドキュメント「箱車の喜び」BS世界のドキュメンタリー「Growing Up Online」など。 NNNドキュメントが印象的でし…

 あのころの未来/谷口ジロー「犬を飼う」

後輩の家に招かれて愉しい時間を過ごした。同じ年だけど入社が一年違いの後輩とは、20代の半ばにお互い縁もゆかりもない土地に赴任し、3年間机を並べた。彼は、才能溢れているがゆえに、上司から理不尽な仕打ちをうけることが多かった。僕自身も、将来に…

 路傍の花

明治通りを歩きながら取材先に向かっている途中で、路傍につつましやかな花壇を見つけた。 小さいけれど心が行き届いているその花壇になぜか強く惹かれるものがあった。 ささやかだけど、目が行き届いて、大言壮語はしないけれど、本質的なことからは逃げな…

出張中の読書

海外出張は、移動時間が長いので、日本にいるときより本を読めるのが何よりだ。 今回の出張中に読んだ本。 夏の闇 (新潮文庫)作者: 開高健出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 26回この商品を含むブログ (44件) を見る…

 時差ぼけと是枝裕和

時差ぼけ。アメリカ国内を移動してさらに時間の感覚がおかしくなっていく。 以前はそんなに気にならなかったが、今回はそれなりのダメージが体に蓄積されていき体内時計は狂いっぱなしだ。 朝から撮影をして、夜は打ち合わせをして、遅くにホテルに戻って見…

「空海の風景」を旅する

久しぶりのアメリカ出張。飛行機で隣の席に座ったサラリーマンらしき白人の紳士が、10時間近いフライトの間、ずっと漢字の練習をしていた。見るとはなしに手元を見ると、 などとノートに漢字を一心に書き取っている。紳士が柔和な感じの方だったせいか、そ…

ザ・ノンフィクション「姉と弟のススキノ物語」 NNNドキュメント「兵士たちが記録した南京大虐殺」

日曜日は一週間の中でドキュメンタリーの放送枠が一番多い日だ。何本かドキュメンタリーを見る。テレビドキュメンタリーには定型があるようでないことを考える。特に民放のドキュメンタリーの場合は、伝え手(記者やディレクター)の思いが最も重視されてい…

最相葉月「東京大学応援部物語」/にっぽんの現場「告発の電話鳴りやまず」

漠然と車を走らせていると桜のトンネルに出くわした。 桜のトンネルをくぐりながら、高校生のころに中原俊監督の「桜の園」という映画を見て、女子高の演劇部の他愛ない日常の屈託を描いた小さな世界のお話なのに、「永遠」を描いている気がして、静かな感動…

新しい航海

泊りがけの出張に行きました。準備を進めている番組の企画で、初めてカメラマンと音声マンを伴ったロケでした。最近は、民生機の発達でロケを1人で行うことも多いのですが、ひとまずは3人という人数が普通のドキュメンタリー番組の最小単位です。1人でデ…

絲山秋子「沖で待つ」

先日来、道を同じくしてきた同期2人と再開する機会にめぐまれた。 慣れ合うような付き合いではないけれど、芯から信頼できる畏友たちだ。今は、担当している番組のテーマも別々で果たしてそれが、それぞれにとって適性かどうかは分からないが、彼らの番組だ…

桜と食の安全と

桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下…

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

久し振りに映画館で映画を見た。ぜひ見たいと思っていた「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」。映画館は満員で、ほとんど団塊の世代以上のように見受けられた。 内容は、自分の中で容易には言語化できないほど圧倒的で、その昏さは「時代」という一言で片…

 what you can do for your・・・

ここ1週間、朝から深夜まで会社の中にこもりっきりになっているうちに、街ではもう桜が満開を迎えているようだ。さかのぼればこの1ヵ月、他部署の人たちと頭をつきあわせ、喧々諤々、議論百出、自分は何のために今このことをしているのかという思いに引き…

人物を等身大に描くということ

日曜日、取材で東大を訪れる。実人生で全く縁がない場所である。 安藤忠雄氏が建築した福武ホールという建物の中で若い3人を取材させていただいた。とても楽しく取材させていただいたが、それはそうと安藤忠雄氏は2度ほどお会いさせていただいたことがある…

NHK特集「どんなご縁で」

夜、お気に入りのドキュメンタリーを見る。NHK特集「どんなご縁で」。個人的に5本の指に入る番組で、いつも自分が迷ったら見ているような気がする。がんに侵された老作家と、認知症を患う妻の愛と葛藤の物語。ほとんどがイメージカットと証言でつづられ…